第18回世界コンピュータ将棋選手権 1次予選 3回戦
第3戦の相手は「あうあう将棋」。
対局が始まったのを見届け、作者の方にご挨拶。
「ym将棋」という名前の由来を聞かれました。
これは大した意味があるわけでなく、作者のイニシャルから取っただけです。
それより、あうあう将棋のディスプレイに表示されている将棋盤にびっくりしました。
盤が3D表示になっていて、駒にもちゃんと厚みがあります。玉や大駒は大きく、厚くなっていて、なかなか凝っています。
作者の方は「こんなところばかり凝っていて…」とおっしゃってましたが。
対局の方は、3 手目に後手あうあう将棋が△92飛。
これはどういう狙いなんでしょうか。ここから攻められたら、おそらくym将棋は一瞬でやられるでしょう。
以後、20 手過ぎまで両者駒組みが続きます。
この局面は 24手目、△13香まで。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・v金v銀 ・ ・ | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・v角 ・ | 二 |
v歩v歩v桂v歩v歩 ・v桂v歩v香 | 三 |
・ ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 | 四 |
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ | 五 |
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 | 六 |
歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 ・ ・ | 七 |
香 角 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・ | 八 |
玉 ・ ・ ・ ・ 金 銀 桂 香 | 九 |
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先手ym将棋は、玉は99に潜って穴熊っぽい形にしたものの、壁をふさいでません。
一方、後手あうあう将棋は、6 手目に△52玉と上がったきり、金銀を一切動かさず、桂を左右両方跳ねてきました。
ここからym将棋、▲24歩△同歩▲同飛と仕掛けます。
あうあう将棋が△75歩と打ったのを受けず、逆に▲23歩打。
△11角と逃げた後で▲75歩と取るのですが、直後に△76歩と打たれ、収拾がつかなくなってきました。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・v金v銀 ・v角 | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ | 二 |
v歩v歩v桂v歩v歩 ・v桂 歩v香 | 三 |
・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 飛v歩 | 四 |
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ | 五 |
・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 | 六 |
歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 ・ ・ | 七 |
香 角 金 銀 ・ ・ ・ ・ ・ | 八 |
玉 ・ ・ ・ ・ 金 銀 桂 香 | 九 |
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この時のym将棋は 46 秒考えて、7 反復目の途中まで。
読み筋は、▲34飛△51王▲74歩△62銀▲79銀△32金▲22歩成。
その前からずっと先手有利だと思ってたのですが、この時点で評価値は +1700 くらいでした。
実戦では、▲34飛と歩を取った後、△77歩成▲同角で桂と歩を交換。△32金とされたので33の桂を取れず、▲44飛と歩を取りました。
その後、△27桂打と攻め込まれましたが、▲28銀△19桂成▲同銀、として香と桂を交換。
図は 41 手目、▲19同銀まで。
後手の持駒:香 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・ ・v銀 ・v角 | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・v金 ・ ・ | 二 |
v歩v歩v桂v歩v歩 ・v桂 歩v香 | 三 |
・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・v歩 | 四 |
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ | 五 |
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 | 六 |
歩 歩 角 歩 歩 歩 歩 ・ ・ | 七 |
香 ・ 金 銀 ・ ・ ・ ・ ・ | 八 |
玉 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 銀 | 九 |
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この時点でもまだ自分が有利だと判断してました。
ただ、読み筋が▲19銀△51王▲43桂打△41王▲31桂成△31王▲12銀打、で相手の方は王を動かして守りを固めるのが最善と思っている。
そして、あうあう将棋の次の一手は、△76香打。これが逆転の手となったようです。
この手は過小評価していたのか、指されてみるとうまい受けが思いつきません。
角を逃げても△78香成と金を取られ、しかも68の銀で受けられてないので大ピンチになってしまいます。
ym将棋もまずいことが起こっているのを理解し、評価値は一気に -500 くらいまで落ちました。
読み筋は▲35桂打△51王▲74飛△77香成▲同金△62金。角はあきらめて、それ以上被害が広がらないように、ということでしょう。
なぜ▲35桂打なのかはよく分りません。王の周辺に利きをつけるのが高評価されたのでしょうか。
実戦では、▲35桂打の後△77香不成▲同銀と進み、△25桂▲24飛の後△69角打。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・ ・v銀 ・v角 | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・v金 ・ ・ | 二 |
v歩v歩v桂v歩v歩 ・ ・ 歩v香 | 三 |
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛v歩 | 四 |
・ ・ 歩 ・ ・ ・ 桂v桂 ・ | 五 |
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 | 六 |
歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ ・ | 七 |
香 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・ | 八 |
玉 ・ ・v角 ・ 金 ・ 桂 銀 | 九 |
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この後馬を作られ、ym将棋も必死の反撃を試みますが、60 手目あうあう将棋の△33金で飛車を討ち取られてしまいました。
後手の持駒:桂 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・ ・v銀 ・v角 | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ | 二 |
v歩v歩v桂v歩v歩 ・v金 歩v香 | 三 |
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛v歩 | 四 |
・ ・ ・ ・ ・ ・v香v桂 ・ | 五 |
・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 歩 | 六 |
歩 歩 ・ 歩 歩v馬 歩 ・ ・ | 七 |
香 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ | 八 |
玉 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 銀 | 九 |
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仕方がないので、せめて桂を道連れにしようと▲25飛を選択。当然△同馬とされ、ついに大駒を 4 枚とも取られてしまいます。
こうなってはあっという間に負けてもおかしくないところですが、あうあう将棋はじわじわと成駒を増やし、40手ほど進んだところで、と金が 4 枚も出来ていました。
図は 108 手目、△49歩成まで。
後手の持駒:銀 桂四 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・ ・v銀 ・v角 | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ | 二 |
v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・v香 | 三 |
・ ・ ・v龍 ・ ・ ・ ・v歩 | 四 |
・v歩 歩 ・ ・ ・v金 ・ ・ | 五 |
歩 ・ ・ 銀 ・ ・ ・ 歩 歩 | 六 |
・ 歩 金 歩 歩v馬 ・ ・v杏 | 七 |
香 ・ 金 ・ ・ ・ ・vと ・ | 八 |
玉 ・ ・ ・ ・vとvとvと ・ | 九 |
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この時点で、ym将棋の残り時間は 30 秒を切っていました。
観戦に来られていた方(確か「謎的電棋」の作者さん)が
「これは、(あうあう将棋の)切れ負けを期待するしかないですねえ。でも、あうあう将棋は時々とんでもない負け方をするからなあ」
とおっしゃってました。
名前の由来や、「棒玉」戦法についてもお話しを聞くことができました。
それでも、最終的に 2 次予選に進出されたのですから、弱いソフトでないことは間違いないでしょう。
また、そばにいらした CSA の理事の方(たぶん山田さん)は、
「(と金を大量に作るのは)最近では珍しいですね」とコメントされていました。
ym将棋の切れ負けかとも思われたのですが、122 手目の△88銀打で先手玉が詰み、投了となりました。
先手の残り時間は 18 秒、後手あうあう将棋も残り 5 分半程度でした。
以下、投了図です。
後手の持駒:桂二 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1
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v香 ・v銀v金 ・ ・v銀 ・v角 | 一 |
v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ | 二 |
v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・v香 | 三 |
・ ・ ・ ・v桂 ・ ・ ・v歩 | 四 |
・ 金 歩 ・ ・ ・v金 ・ ・ | 五 |
歩 ・v桂 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 | 六 |
・ 歩 金 ・ 歩v馬 ・ ・v杏 | 七 |
香v銀 ・ ・ ・ ・ ・vと ・ | 八 |
・ 玉 ・v銀 ・vとvとvと ・ | 九 |
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ym将棋は以前から、77に桂を跳ねると、76の歩を攻められた後うまく処理できずに負けてしまうパターンが多かったので、この局もそれにはまってしまったようです。
後手あうあう将棋の92の飛車は、結局最後まで働きを見せる機会がありませんでした。。