第20回世界コンピュータ将棋選手権 1次予選 4回戦

4回戦の相手は「メカウーサー」。
対局前に作者の方が挨拶に来られたのですが、その時は3回戦後に判明したバグを調べていたところで殺気立っていたので、気のない態度を取ってしまってすみませんでした。
対局が始まった後、改めてご挨拶して、そのままメカウーサーさんのモニターで観戦させていただきました。

何でも、グラフィック用のプロセッサで256並列で処理をしているとのこと。(専門外なので間違っていたらすみません)
手を指すごとに処理を分割していくと、あっという間に数千に分割されるのですが、それを全部グラフィックボードに投げて、あとはロードバランサーが勝手に処理をスケジュールしてくれる(プログラムでは意識しない)という考え方のようです。
ただ、1つの処理が10秒だかを超えるとタイムアウトで異常終了するので、それを超えないように気をつけて分割しなければならないそうです。


また、このような処理だと探索延長のようなことが難しいらしく、PVの延長や枝刈りなどは全くやっておらず、本当に深さ4固定の全幅探索なのだそうです。
評価関数がどうなっているのか聞き忘れてしまいました。
モニターの表示はテキストベースなのですが、何か指すたびに気の利いたメッセージが出るのがおもしろかったです。
(中継ブログでも取り上げられていたので参照ください)


対局は先手ym将棋の▲76歩に対し、メカウーサーの△62王でいきなり定跡を外れました。

後手:mechawooser
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂v銀v金 ・ ・v銀v桂v香
・v飛 ・v玉 ・v金 ・v角 ・
・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩
v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・
歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩
・ 角 ・ ・ ・ 玉 ・ 飛 ・
香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:なし 手数=9 ▲2四歩 まで 後手番


この局面、後手は角の頭を守る必要があるのですが、ここでメカウーサーは△88角不成*1
▲88同銀で角交換の後、メカウーサーは△51金。
ym将棋はもちろん▲23歩成で、これでたぶん勝負はついたと思われます。


モニターを見ながら声を上げてしまったのは次の局面。

後手:mechawooser
後手の持駒:角 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂v銀 ・v金 ・ と ・v香
・v飛 ・v玉 ・v金 ・ ・ ・
・ 銀v歩v歩v歩 ・ ・ ・v歩
・v歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・
v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・
・ ・ 歩 ・ 角 ・ ・ ・ ・
歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩
・ 銀 ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・
香 桂 ・ 金 ・ 金 銀 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:桂 歩  手数=23 ▲8三銀 まで 後手番


ym将棋が▲83銀と打ったところ。
これは何? と驚愕したのですが、よく見ると56に角が打ってあることに気づき、安堵。
△同飛▲同角成で馬を作った後、メカウーサーは受けの手を指せず、数手で投了となりました。


以下、投了図です。

後手:mechawooser
後手の持駒:角 銀 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
・v桂v銀 ・v金 ・ と ・ ・
v香 ・ ・v玉 ・v金 ・ ・v香
・ 馬v歩 圭v歩 ・ ・ ・v歩
・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・
v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 ・
・ ・ 歩 飛 ・ ・ ・ ・ ・
歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩
・ 銀 ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・
香 桂 ・ 金 ・ 金 銀 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:歩二  手数=31 ▲6三桂成 まで 後手番


メカウーサーは他の対局も同様な経過をたどっていたそうで、単純に全幅で読んでいるため、強い水平線効果が出ているのだと思います。
新しい技術ですし、作者の方は来年も参加したいとお話されていたので、レベルアップした姿を見てみたいです。(なんか偉そう…)

*1:角成ではない