第22回世界コンピュータ将棋選手権 1次予選 4回戦

4回戦の相手は「さわにゃんRL」。
初対戦です。

棋譜はこちら。
http://homepage.mac.com/junichi_takada/wcsc22/kifu/WCSC22_L4_YMS_SRL.html

作者さんとym将棋のモニターで観戦。
この対局もかなり悔しい内容になりました。

先手ym将棋の▲76歩に対し、後手さわにゃんRLの2手目は△42銀。
いきなり定跡を外れた後、先手飛車先の歩交換をした以外、ずっと動きがなく、時間だけが過ぎていきます。

ようやく少し局面が動いたのが、95手目、図の局面。

後手:sawa
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
・v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香
v香 ・v金 ・ ・v銀v金v角 ・
v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩
・v銀 ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・
歩v歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩
・ 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ 飛 ・
桂 ・ 銀 金 ・ ・ 歩 ・ ・
・ 角 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・
香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:歩  手数=95 ▲8六歩 まで 後手番

ここで△96銀▲85桂と歩交換をした後、また動きが止まりました。
後手が少しミスをしたかな、と思ったのが次の局面。

後手:sawa
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
・v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香
v香 ・ ・v金v銀 ・v金v角 ・
・ ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩
・v銀 ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・
v歩 桂 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩
・ 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ 飛 香
・ ・ ・ 金 ・ ・ 歩 ・ ・
・ 角 玉 金 ・ 銀 ・ ・ ・
香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:歩二  手数=109 ▲1六香 まで 後手番

ここで△14歩と突いてきたのですが、▲同歩で歩損しただけに終わり、△同香には▲同香があるため、どうするかと思ったら△18歩打。
ここからym将棋がみごとな攻めを見せてくれました。
▲13歩成△同桂▲14歩打△25桂▲13歩成△同香▲同香△同角、と進んだのが次の局面。

後手:sawa
後手の持駒:香 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
・v桂 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・
v香 ・ ・v金v銀 ・v金 ・ ・
・ ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩v角
・v銀 ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・
v歩 桂 ・ 歩 歩 歩 ・v桂 ・
・ 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ 飛 ・
・ ・ ・ 金 ・ ・ 歩 ・ ・
・ 角 玉 金 ・ 銀 ・ ・v歩
香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:香 歩二  手数=120 ▽1三同角 まで

ここからさらに▲16飛と1筋を攻めていきます。
後手は△22金と受けますが、▲14香打△24角▲12香成、で1筋を突破。
評価値も先手優勢に振れていきました。
ただ、後手玉を左の方に追ってしまって決め手がなくなり、しばらく先手陣内で駒の取り合いになります。


この時、モニター前では、残り時間のことが話題になっていたと思います。
120手目の時点で、先手の消費時間は20分16秒、後手は15分ちょうど。
さわにゃんRLは、1手15秒固定の時間制御になっているそうなので、60手指すとぴったり15分になるわけです。
駒割では先手有利なものの、時間内に後手玉を詰ませられるかどうかが焦点になってきました。
さわにゃんRLの作者さんは元小谷研の方だそうで、周囲は研究室のメンバーで賑やかに。


大きく動いたのは次の局面。

後手:sawa
後手の持駒:桂二 香 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
・v桂 ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・v金v銀 銀 金 杏 ・
・ ・v歩v歩v歩v歩v歩 龍 ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 桂
・ ・ 歩 ・ 銀 ・v飛 ・v馬
玉 ・ ・ 金 ・ ・ 歩 ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v金vと
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:角 香二 歩六  手数=171 ▲1五桂 まで 後手番


ym将棋の方は残り1分を切って、1秒将棋に入っています。後手はまだ1手15秒で、残り4分ちょっと。
ここから△26飛と先手龍に当ててきたところ、ym将棋が▲同龍△同馬と交換に応じて、攻めの手段ができました。
以下▲84香打に対して、△94香打▲95歩打△同香▲96歩打とやりとりがあり、激しい攻め合いの後この局面に。

後手:sawa
後手の持駒:銀 桂 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
・ 杏 ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛
・ ・v金 ・v玉 ・ 金 杏 ・
・ ・v歩v歩v歩v歩v歩 圭 ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
v香 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・
・ 玉 歩 ・ 銀 ・ ・v馬 ・
・ ・ ・ 金 ・ ・ 歩 ・ ・
・v銀 ・ ・ ・v龍 ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v金vと
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:角 銀 桂二 香 歩四  手数=196 ▽5二同玉 まで


ここでym将棋は▲84角打としてしまいます。これが痛恨のミス。
少し長く読ませたところ、▲21飛成で必至*1と返してきました。
1秒将棋になっていなければ▲21飛成を指せたと思われます。
また、試しにBlunderに解析させてみたら、▲64桂打から19手詰があったようです。


実戦では、▲84角打△74桂打に対して▲95玉、さらに△94歩打の王手に対して▲96玉と逃げたのが敗着。
以下△97銀成から即詰みとなり、惜しい対局を落としてしまいました。
△94歩打に対してはおそらく▲同玉と取るのが正しいと思われます。
1勝3敗。


作者の方は、2010年のGPWでTreeStrapに関する論文を発表されていて、
ym将棋がTreeStrapを使っているということで、それについての話をかなりしました。
ym将棋の実装は、論文とは少し違っているので、その違いなどを主に話したと思います。
あと、その前のGPWではモンテカルロ探索の発表もされていて、興味を持つ分野が似ているのかもしれません。


ここでアピール文書の補足。
評価関数の特徴としては、2駒間の関係と3駒間の関係を使っていますが、
2駒間の関係は絶対位置、3駒間の関係は相対位置で見ています。
絶対位置の評価なので、「先手玉が88にいるときの、77にいる先手金の価値」みたいな評価です。
「絶対位置で左右対称は考慮してますか」と聞かれたのですが、家に帰って見直したら、それは考慮してませんでした。
考慮しているのは点対称についてで、
「先手玉が88にいるときの、78にいる先手金の価値」と
「後手玉が22にいるときの、32にいる後手金の価値」は同じものとみなして処理しています。

*1:▲41竜以下、△62玉▲51銀打△61玉▲52角打