第20回世界コンピュータ将棋選手権 1次予選 1回戦

昨年に引き続き自戦記を書いてみます。


1回戦の相手は「ツツカナ」。
選手権は3度目の参加ですが、今回が一番不安でした。
オープン戦にもfloodgateにも参戦せずに本番に臨んだのは今回が初めて、ということもあります。
さらに、今年は一からプログラムを書きなおしていて、しかもデバッグの時間が十分取れていないので、実戦でどんな動きをするかはほとんど未検証という点が最大の不安要素です。


初出場のツツカナの作者さんと対局前に雑談。
確かBonanza式の学習をされているということだったと思いますが、そこにponanzaのいっせいさんが通りがかって
「ツツカナさんは強いですよ。昨日のテスト対局で棋理を破ってますから」
と耳打ち。作者さん本人は「あれは練習ですから」と謙遜されてましたが、この後の実戦でも再度棋理を下しているので、実力は本物と見ていいでしょう。


対局はかなり終盤まで評価値互角だったものの、素人目にもym将棋の勝ち目は無さそうな感じでした。
両者ともじりじり駒を進め、最初に首をひねったのはこの局面。

後手:tsutsukana
後手の持駒:飛 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂v銀v金 ・ ・ ・v桂v香
・ ・v玉 ・v金 ・ ・ ・ ・
v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・v歩
・ ・ ・ ・v銀v歩v歩v角 ・
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・
歩 歩 角 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩
・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・ ・ ・
香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:飛 歩  手数=26 ▽2四同角 まで


24の地点で、△24歩▲同歩△同飛▲同飛△同角と後手から駒交換した直後、先手ym将棋の指し手は▲26飛打。
ツツカナのモニターで観戦しつつ、作者さんと「22に打つのかな?」と話していたくらいで、なぜそこに打つのか疑問でした。
この時点では「弱いなあ」と思っていました。


私が驚いたのは次の局面。

後手:tsutsukana
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂v銀v金 ・ ・ ・ ・v香
・v玉 ・ ・v金 ・ ・v飛 ・
v歩v歩v歩v歩v歩v銀v角 ・v歩
・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・
・ ・ 歩 ・ 歩v桂 ・v歩 ・
・ ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・
歩 歩 角 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩
・ ・ 玉 銀 金 ・ ・ 飛 ・
香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:なし 手数=41 ▲3六歩 まで 後手番


後手ツツカナは、△72銀と上がって美濃囲いを完成させるかと思いきや、△92香と上がって穴熊へ。

後手:tsutsukana
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v玉v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香
v香v銀 ・ ・v金 ・ ・v飛 ・
v歩v歩v歩v歩 ・ ・v角 ・v歩
・ ・ ・ ・v銀v歩v歩 ・ ・
・ ・ 歩 ・ ・v桂 ・v歩 ・
歩 歩 銀 歩v歩 銀 歩 ・ ・
・ ・ 角 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩
・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・ 飛 ・
香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:歩  手数=52 ▽5六歩 まで


ほぼ負けが決まった一手。
この後、何の工夫もなく△57歩成を許してしまい、数手で後手の穴熊が完成。

後手:tsutsukana
後手の持駒:金 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v玉v桂v金 ・ ・ ・ ・ ・v香
v香v銀v金 ・ ・ ・ ・v飛 ・
v歩v歩v歩v歩 ・ ・v角 ・v歩
・ ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・
・ ・ 歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・
歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・
・ ・ 角 銀 ・ 歩 銀 歩 歩
・ ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・
香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:桂 歩二  手数=64 ▽7二金寄 まで


ym将棋の評価値的にはほぼ互角の値なのですが、どう見ても先手が勝てそうに思えません。
実際、後手の穴熊にはほとんど触れることができず、117手で詰みとなりました。
以下、投了図です。

後手:tsutsukana
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v玉v桂v金 ・ ・ ・ ・ ・v香
v香v銀v金 ・ ・ ・ ・v角 ・
v歩v歩 ・v歩 ・ ・ 金 ・v歩
・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・
・ 歩v角 ・ ・ 桂 ・v歩 ・
・v飛 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・
・v全 ・v全v歩 歩 銀 歩 歩
玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・
香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:金 歩四  手数=116 ▽8七成銀 まで


ym将棋はどちらかというと乱戦で勝ちを拾うタイプなので、相手にここまできれいに囲われると、まず勝てません。
ツツカナも普段は同じようなタイプで、きれいに囲うのは珍しいそうです。


「ツツカナ」の由来について聞こうと思っていたのですが、忘れてしまいました。。
後でお聞きしてみると、時計の部品の名前だとのこと。