第19回世界コンピュータ将棋選手権 2次予選 1回戦

1回戦の相手は「備後将棋」。
1次予選で最下位通過ということは、2次予選初戦では昨年の2次予選トップと当たることになります。
備後将棋はfloodgateでのレーティングが2000をはるかに超えていて、隣の席で大きなサーバを動かしているのを見ても、とうてい勝てる気がしません。


対局中、ちょっとディスプレイをのぞかせて頂きました。
探索速度(nps)を伺ってみると、4コアで「秒間120万局面くらい」ということでした。


将棋の方は、本当に一瞬の隙を突かれて、そのまま圧倒された、という感じでした。
作者の恩本さんに指摘されたのは、この局面です。

後手:bingo
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂 ・v金v玉v金 ・ ・v香
・ ・ ・v銀 ・ ・v銀 ・ ・
v歩 ・v歩v歩 ・v歩v桂v歩v歩
・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ 角v歩 ・ ・ ・ ・
銀v歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・
歩v角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩
・ ・ 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・
香 桂 ・ 玉 ・ 金 ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:歩二  手数=28 ▽8七角 まで


87に角を打ちこまれた場面。銀か金で取りたくなります。
ym将棋は▲87同銀と取りました。この時の読み筋は△87同歩成▲68金△85飛▲75歩で、私から見れば、ああなるほど、という手順です。
実際、▲68金まではその通り進んだのですが、後手の次の一手は△98と。

後手:bingo
後手の持駒:銀 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂 ・v金v玉v金 ・ ・v香
・ ・ ・v銀 ・ ・v銀 ・ ・
v歩 ・v歩v歩 ・v歩v桂v歩v歩
・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ 角v歩 ・ ・ ・ ・
・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・
歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩
vと ・ ・ 金 ・ 銀 ・ 飛 ・
香 桂 ・ 玉 ・ 金 ・ 桂 香
                                                        • +
先手:ymshogi 先手の持駒:角 歩二  手数=32 ▽9八と まで


ここまで来ないと危険に気付かないym将棋も変ですが、やっと▲77桂と逃げるもすでに遅く、△89飛成を許してしまいました。
戻って▲87同銀では、「▲88歩打でよかったのでは」というのが恩本さんのお話でした。
私は最初、「Late Move Reductionの悪影響」と思っていました。87の角が移動する手がいずれも駒損になるので、読みの深さが減らされてしまい、その後の変化が十分読めていなかったのではないかと思い、恩本さんにもそのようにお話しました。
しかし、後でよく調べてみたところ、それほど単純な話ではないことが分かってきました。
まず、LMRの影響ではないことが判明*1
また、▲88歩打は読めていなかったのではなく、その後に△64飛という手があって、先手の角が死んでしまうので、5手読み程度では▲87同銀の方が良いように見えたようです。


後はもう見るべき場面もなく、ほとんど一方的に攻められた結果、64手で投了となりました。
1手のミスが、即座に致命傷となること、また全幅で深さ10くらい読めないと、(少なくともシード組とは)勝負にならないことで、二次予選のレベルの高さを思い知りました。

*1:長くなるので詳細は省略するが、SEEの処理簡略化の影響で、駒損になることが把握しきれず、結果としてreductionされてなかった