第20回世界コンピュータ将棋選手権 1次予選 7回戦

7回戦の相手は「白砂将棋」。
ym将棋は今回が3度目の選手権ですが、白砂将棋とは3回連続で対戦し、しかも全て1次予選最終戦という奇縁です。
今年は時間制御などを改善されたとのことでした。


ym将棋のモニターで作者さんと観戦していましたが、はっきり言って、この対局は悔いが残るものでした。

後手:ymshogi
後手の持駒:歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香v桂v玉 ・ ・ ・ ・ ・v香
・ ・ ・v銀v金v金 ・v銀 ・
v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・
・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・
・ ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・ 歩
・ ・ 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ ・
歩 歩 桂 銀 歩 歩 ・ 歩 ・
・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 玉 ・
香 ・ ・ ・ 飛 金 ・ 桂 香
                                                        • +
先手:hakusa 先手の持駒:角 歩二  手数=41 ▲4六銀 まで 後手番


勝負が決まったのはこの局面。
ym将棋は△37桂成と、タダで桂を捨ててしまいました。
探索中のメッセージでは、△44歩という常識的な手を読んでいたのですが、実際に指したのは△37桂成。


この後、白砂将棋もいくつか甘い手があったようですが、形勢がひっくり返るようなことはなく、93手で投了となりました。


以下、投了図です。

後手:ymshogi
後手の持駒:銀 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
                                                        • +
v香 ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ ・
v玉 金 ・ 全 ・ ・v歩 龍 歩
v桂 ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩 ・
v歩 ・ ・ ・ 玉 ・v香 ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・
歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・
・ 歩 桂 銀 歩 歩 ・v杏 ・
・ ・ 金 ・v歩 ・ ・ ・ ・
香 ・ ・ ・ 飛 金 ・ 桂 ・
                                                        • +
先手:hakusa 先手の持駒:角 銀 桂 歩三  手数=93 ▲8二金 まで 後手番


△37桂成と指した原因は、その場ではよく分からず、指し手決定*1が間違っていて、誤ってモンテカルロ探索の手を選択してしまったのではないか、と思っていました。
ところが、ログを見返してみるとそうではないことが判明。
なんと、△37桂成で詰んだと誤判断して指していたのでした。


ym将棋はdf-pnの詰将棋を搭載していますが、ルート局面での詰将棋は時間をかけるため、αβ探索でなく、モンテカルロ探索のスレッドで処理しています。
そこで詰みを見つけると、モンテカルロ探索で詰みを見つけたとみなして処理をする、という横着な実装になっていて、従って詰将棋で詰みを見つけた以上、その指し手を選ぶのは当然で、指し手決定は間違っていなかったわけです。
今回は詰将棋で詰まないものを誤って詰みと判定したのが原因で、6回戦の対こまあそび戦の途中で▲72竜と切ったのも同じ理由でした。
詰将棋の方はまだデバッグしてませんが、ここは最近修正していない部分なので、かなり根が深いバグだと思われます。


これで3勝4敗となり、2次予選進出はなくなりました。
もっとも、後で計算してみると、もし勝っていたとしても、ソルコフの関係で2次予選には進めなかったことが分かり、あきらめはつきました。


今回は1次予選のレベルが高かったようです。
あの棋理が8位進出という厳しさでは、今のym将棋では無理だろうと思います。
おそらく、floodgateで最低R1800、できればR2000以上はないと2次には進めないのではないでしょうか。
今年は言わば「出来たて」のプログラムで参加したわけですから、作者としてもどこか不完全燃焼でした。
1年間で「熟成」させて、来年は悔いの残らないように対局に臨みたいと思います。


それと、稲庭将棋対策も議論が沸き起こるのではないでしょうか。
今のところ有効な手立ては見つかっていないようですが、唯一「なのは」が敵陣を突破したということなので、後で棋譜を見てみたいと思います。

*1:αβ探索とモンテカルロ探索が独立して探索を行っていて、探索終了後にどちらの指し手を使うか決定する